施設に入所してから3週以上が過ぎたのに、母は一度も住まいの話をしないし、あれこれ思い出して持ってきて欲しいとも言わないので、もしかするとすっかり忘れてしまっているのではないかと思っていました。ところが今日になって気付いたのは、自分は病院へ入院していて、しばらく養生できたらまた家に帰れると思っているということでした。
だから家のことには何も触れなかったのだと思うのです。そんなあなたが帰りたい家を、すっかり片付けてしまっているとは言えず、もうずっとここで暮らすんだとも言えずでしたが、施設の部屋を見ていると、震えるようになった母が自分で書いたらしきメモが置かれているのを見つけました。
読んでみると字も間違っているし、とても母の字とは思えない乱雑さでしたが、高齢になってからよく自分で歯がゆそうにぼやいていたのが、一つ何かしているとすぐにもう一つを忘れてしまうから、いつも紙に書いておくんよってことでした。
確かに、母の住まいを片付けていると、あっちこっちから自筆のメモが出てくるので、そんな紙切れさえも愛おしく感じてしまった私でしたが、施設の部屋で見つけたメモには、《今夜からこの家に引っ越しをしてきた。皆でちゃんとしてくれて、本当に申し訳なくて御免なさい。本当にありがとうございました。》と書かれていました。
御免なさいは、本当は私が言わないといけないことなのに。

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